newへるす No.40
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リンは、絶え間ないストレスにさらされながら、常習的かつ過度の喫煙や、偏った食生活による高血圧などの持病を抱えていたにもかかわらず、決して薬物治療を受けようとしなかったといいます。そして1953年3月、自室で倒れているところを発見され、数日後に74歳で死去しましたが、病理解剖の結果、死因は左大脳の大きな出血であり、血管のアテローム性動脈硬化が顕著だったことが明らかになりました。このアテローム性動脈硬化とは、動脈の内側に脂肪などの塊(アテローム)が沈着し、それが邪魔をするために血管内の血流が減少あるいは途絶する状態を指しており、そのまま放置すれば脳梗塞、脳出血、心筋梗塞や狭心症などの原因となるのです。これらのうち、脳の動脈の異常事態によって起きる病気を「脳血管疾患」と総称しますが、脳血管疾患の多くは長年の喫煙歴のほか、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病が原因となっているため、現代に生きる私たちにしても、むしろ極めて身近な病気であるといって差し支えありません。今号の拙稿では、社会にストレスが充溢し、飽食が当たり前になった現在だからこそ、私たちがより一層注意しなければいけないこの脳血管疾患について、詳しくご説明したいと思います。①脳の基礎知識脳、脳幹という3つの部位で構成されていますが、そのうち脳全体の約8割を占めるのが大脳です。左脳と右脳の2つに分離している大脳は、さらに前頭葉、頭頂葉、後頭葉、そして側頭葉という部位に分かれていて、それぞれが大事な役割を担っています。脳は大きく分けると、大脳、小例えば、側頭葉の海馬と呼ばれ      3

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