しょうか。この謎を解く鍵が、最近のトピックスである「NAFLD」および「NASH」という病態なのです。肝臓がんの原因としては、肝炎ウイルスの持続感染のほか、お酒の飲みすぎで起こるアルコール性肝障害から肝硬変になり、ついには肝臓がんへと至るというパターンも昔からよく知られていました。ところが、最近になり注目され始めたのが、お酒をほとんど飲んでいないにもかかわらず、栄養の摂りすぎで脂肪肝になる方が肝硬変になり、やがて肝臓がんを発症するというケースが増えてきているという事実です。こういうタイプの病態を、「非アルコール性脂肪性肝疾患」(英語の頭文字を取って「NAFLD」ナッフルディー)と呼びます。アルコール多飲で起こる場合を除いた脂肪肝は全部この中に分類され、その大半に生活習慣病である糖尿病や肥満などが関係していることから、要するにNAFLDは「メタボリックシンドロームが引き起こす肝疾患」であるといえるでしょう。また、このNAFLDに相当する方のうち、ただの脂肪肝では終わらず肝炎へと進展し、最終的には肝硬変から肝がんに至るリスクが高くなるタイプを「非アルコール性脂肪肝炎」(英語の頭文字を取って「NASH」ナッシュ)といい、こういった新たなパターンの肝臓がん患者の急増が、近年の死亡者数の激減を阻んでいるのが実情なのです。④肝臓がんの症状と検査法は沈黙の臓器と呼ばれ、肝臓がんでも多くの場合、自覚症状がないまま進行します。よく使われる表現ですが、肝臓8
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