ある程度進行した肝臓がんで出現する症状といえば、皮膚や目の結膜が黄色くなる黄疸や食欲不振、倦怠感、上腹部痛、腹部の圧迫感や張りなどを代表とし、さらに悪化して肝機能不全の状態を起こすと、腹水や出血傾向、意識障害(体内にアンモニアが溜まって起きる肝性昏睡)などが認められるようになりますが、ここまでの症状が出る時はすでに末期的な状態であることがほとんどです。つまり、肝臓がんは健康診断や人間ドックの検査によって偶然発見される場合が大半を占めるといってよく、定期的な検査がいかに大切かということが、ここでもよく分かります。健康診断や人間ドックでのスクリーニング検査も含め、肝臓がんの検査法のうち最も簡便で有用なのは、やはり腹部超音波検査(腹部エコー検査)でしょう。まずは腹部超音波検査で病変を探し、腫瘍だと思われる所見が発見された場合は、その質的診断のために腹部造影CT検査や腹部造影MRI検査を行います。また、同時に採血で腫瘍マーカーなどを調べ、各種の画像検査と組み合わせて総合的に診断しますが、場合によっては肝臓の腫瘍から直接細胞を採取する針生検という精密検査を行うこともあります。⑤肝臓がんの治療法には、重要となるファクターがいくつかあります。肝臓がんの背景には慢性肝炎や肝硬変という病気が潜んでいるため、肝臓が厳しい治療に耐えられるだけの能力を残しているかどうかを見極めねばなりません。つまり、現在の肝臓の障害度を見るのです。肝臓がんの治療法を決定する際そのひとつとして、多くの場合9
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