ううま たキュウリを手渡してくれました。一口食べ、びっくりしました。あまりのみずみずしさに舌は驚き、目のピントがパチッと合ったのです。飲み込むと食道から胃に向かってキュウリが降りていくのと合わせてエネルギーが胸を中心に全身にジワジワ広がっていき、細胞の一つ一つが元気になっていくのがわかりました。すると急に頭が冴えてきて、そのキュウリを使った料理のアイデアが次々に湧き上がってきました」 「このとき私は、品質の良い食材こそが人を健康にしてくれる、さらには人間のポテンシャルを向上させると、身をもって体験したのです。それ以来、最高の食材を探して全国を旅するようになりました。今では日本のどこにどんな優れた食材があるか、だいたいわかります」一時は精進的な味を求めた奥田さんだが、実はどんなジャンルの料理もこなす。期より和食を父に習い、東京の修業時代はイタリア料理、フランス菓子を学び、最後に修業した店はフランス料理も出す高級ステーキイタリア料理人を名乗っていると言うのも、料理の基本は幼少▼食べ物に救われた経験奥田さんは、仕入れ先の農家で食べた一本のキュウリが自分の体をよみがえらせてくれた経験が忘れられないと言う。それはレストランを開業したての三十代、一人で仕入れから仕込み、営業中の料理作りを取り仕切っていた頃のこと。 「ある年の夏、鶴岡市の外と内の島じキュウリという珍しい種類のキュウリの畑に案内された時のことです。刺すような太陽の光に照らされて、睡眠不足の私は意識が朦も朧ろとしていました。そんな私を見かねた生産者が、その場でもぎ取っ▼体に良い食べものの追求から29
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