newへるす No.41
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店と幅広く経験を積んだ過去を持つからだ。本店のイタリア料理店に始まり、パスタ専門店、ピザ店、フランス料理店、和食店とさまざま手がけてきた。近年ではしょうゆを使わずオイルと塩でいただく「オイル寿司」の店を銀座や虎ノ門に出している。ジャンルにとらわれない、創作料理の達人なのだ。そんな多彩な奥田さんだが、あるとき迷いの壁に突き当たったことがある。 「創作料理を追求していると誰もがうまいと感じる“常習性を持つ味付け”と“精進的味付け”のどちらに進むか、という岐路に必ず立ちます。常習性を誘う料理は実は簡単で、まずは油脂味・甘味・塩味・旨味の四味を入れる。これは母乳の味で人類が共通して求める味。そこに酸味と焦げ味を付けると無敵の味になります。焼肉やハンバーガーはこの味です。そこに“クセになる味”の苦味または渋味または辛味を入れると常習性が出て繰り返し食べたいと思う味になります。それが焼き肉に対するビール、ハンバーガーに対する清涼飲料水です。これがリピーターを呼びます。そういう料理は店の経営は助かるけれど、食材の持ち味は覆い隠されてしまいます」そんな中、常連客のある医師から、未来の食のあり方は変わっていくと指南を受けた。 「レストランにお越しになったお医者さまから、カプセル薬でビタミンや栄養を取る時代が来るという話を聞いたんです。今で言うサプリメントですね。栄養を錠剤で摂取できるなら、レストランはカロリーが低いものにしよう。ならば目指すのは精進的な味付けだと考えました」   イタリアンをしのばせた料理と言でソースを使わない、極めてシンプルな料理を開発していった。それは一般的なイタリアの郷土料理とはかけ離れ、むしろ懐石料理にった方が近い。それから奥田さんは低カロリー30

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