すると今度は、お客さまからこんなことを言われるようになった。 「お客さまから、“自分はこんな病院食のような料理を食べに来たんじゃない”と怒られたのです。そこで私は気がつきました。あ、そうか。レストランは楽しくないといけないんだ、と。職業ごとの役割は違って、体を治すのがお医者さまの使命なら、料理人の使命は人を楽しませることだ」▼入院で気付いた料理の方向性精進的な味の追求をとがめられた折、奥田さんは体を壊し、人生初めての入院を経験する。 「胆のう結石でした。その頃は全国から招待を受けて、その土地の食材を使って料理を作る仕事をしていましたが、仕事の前の晩は接待を受けることが常でした。出される料理は残さない主義なので、ごちそうを全て食べていたら体を壊しました」 「入院中、食べることを禁止された私は、お世話をしてくれる看護師や診察に来る医師を捕まえては、質問攻めにしたのです。食べたものの栄養はそれぞれ体の中でどんな役割をするのかを聞きまくりました」その中で、究極の低カロリーを目指すことが健康的なわけではない、バランスの良いものを楽しく食べてもらうことこそが、本当の健康につながると気付いたと言います。 「楽しい場面を作ろうと行き着いたのが、食材の組み合わせで味を作るスタイルです」▼心を健康にする料理を作る楽しいと思ってもらえる「食材の新しい組み合わせ」を生み出すことに情熱を注いだ。栄養が偏らないように動物性タンパク質と植物性タンパク質をバランスよく組み合わせる。そして食材の持ち味をそれから奥田さんは、おいしい、31
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