健康かわら版 11月号 「やけど(熱傷)」について

 秋も深まり、朝夕は暖房が恋しい季節になりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。この時期は暖房を使い始めたり、食事や飲み物も温かいものを用意することが多いと思います。今月は「やけど」についてお話します。身近な暖房器具や調理器具も、使い方を誤ると事故の元になります。軽いやけどは傷跡も残らずに治癒しますが、深いやけど瘢痕を残したり、皮膚の移植が必要となることがあります。また、体表の広範囲に及ぶと生命にも関ります。やけどをしたときにすぐに必要な応急処置について知っておきましょう。


やけど(熱傷・火傷)とは

主に熱による皮膚の損傷のこと。広義 には熱以外に化学物質や放射線・電流 などによるものも含まれる。熱の作用 で身体(主に皮膚)の組織が変性する ことで組織の炎症や壊死などが生じる。 接する温度や時間により、皮膚の侵さ れる深さが違い、第T度〜第V度に分 類される(下表参照)また、身体の広 範囲に及ぶと体液の不均衡などが生じ 、全身性のショックを起こすこともあ る。熱傷面積が広いほど重症となる。

 
やけどの深さとその症状

第T度熱傷 第U度熱傷 第V度熱傷
深さ 皮膚の壊死は表皮内にとどまっている皮膚のバリア機能は保持されているので、感染の危険はない。 侵襲が真皮にまで達している。表皮のバリア機能が失われているため、感染の危険が高い。 表皮・真皮に加え、その下の皮下組織や筋肉にまで壊死が及んでいる状態。感染を起こしやすい。表皮を再生する細胞も死滅しているため、皮膚の再生が望めない。
局所症状 ・発赤や腫れがある
・痛み、熱感あり
・数日で治癒
(軽い日焼けはここに含まれる)
・発赤し水泡が出来る
・強い痛みと灼熱感
・浅い場合は1〜2週間、深い場合は3〜4週間で治癒
・深い場合は瘢痕が残る。
・蒼白または炭化(白くなっているか焦げている状態)
・神経も焼け死んでいるため、痛みなし
・脱毛
・植皮が必要

やけどの重傷度[Artzの基準]

軽症:第U度熱傷が体表の15%未満、または第V度熱傷が体表の2%未満→一般外来で治療
中等度:第U度熱傷が体表の15〜30%、または第V度熱傷が体表の2〜10%→一般外来で入院加療
重度:第U度熱傷が体表の30%以上、または第V度熱傷が体表の10%以上、気道熱傷の合併、骨折などの合併、ショック症状のあるもの→特定の医療機関や救命センターでの集中治療が必要


やけどの面積の計算法

 【成人・9の法則】
頭部・右上肢・左上肢→各9%
陰部→1% 体幹前面・後面・
右下肢・左下肢→各18%
 【小児・5の法則】
頭部・体幹後面・右下肢・
左下肢→各15%
体幹前面→各20%
右上肢・左上肢→各10%
 【乳児・5の法則】
頭部・体幹前面・後面→各20%
右上肢・左上肢・
右下肢・左下肢→各10%
 成人  小児  乳児

応急処置(一般的な家庭内でのやけどの場合)

やけどの応急処置で一番大事なことはすぐに冷やすことです。
第T度〜狭い面積の第U度の場合
・清潔な流水(水道水)で患部を冷やします。少なくとも30分程度は冷やす必要があります。冷やすことで痛みが軽くなったり、やけどの悪化も防げます。このとき強い水圧が直接患部にかからないように気をつけましょう。
顔など流水を掛け続けることが難しい部位の場合は、清潔なタオルで包んだ保冷剤や氷水で冷やしたタオルなどを当てます。氷などを使う場合は、冷やしすぎによる凍傷に注意する必要があります。
広範囲のやけどの場合は水を溜めた浴槽につけたり、水に浸したタオルでくるんで冷やします。全身を冷やすと低体温症になる恐れがあるため、体温が下がり過ぎないように注意が必要です。
衣類の上からのやけどの場合は、衣類の上から冷やします。無理やり脱がすと皮膚を損傷することがあり、治りにくくなります。脱ぐときは擦れないように気をつけ、場合によってはハサミで衣類を切って脱がせることも必要です。衣類が溶けて皮膚に張り付いている場合は、そのまま冷やし、剥がさず病院に行きましょう。
第U度以上のやけどの場合は水疱(水ぶくれ)が出来ます。水疱は破れると感染の危険があるので破らないように注意しましょう。
・十分冷やした後は患部を清潔なガーゼなどで覆い、必要に応じて病院(皮膚科・形成外科など)を受診しましょう。受診する際、塗り薬や油などはつけてはいけません。
第V度の場合は痛みを感じない場合もあります。すぐに冷やして、至急病院を受診しましょう。

低温やけどについて

比較的低温(44℃程度〜)の温度に長時間接することで生じる。熱源は湯たんぽやカイロ、ホットカーペットなど、短時間ならば触れていても熱いと感じない程度のものが多い。状況によっては第U度以上の深い部分まで侵襲されることもある。乳幼児や身体の不自由な方、また糖尿病などで知覚が鈍っている場合は特に注意が必要。

日焼けについて

日焼け(日光皮膚炎)は太陽の紫外線によるやけどの一種。症状は第T〜U度に及びます。広範囲に及ぶ場合が多いので深さのわりに重症になることがある。

事故を防ぐために

小さい子供や身体の不自由な人がいる場合は特に注意が必要です。子どもは身体が小さいため、やけどの占める範囲が広くなり、また皮膚も薄いために重症化しやすい傾向があります。カップや皿に入っている熱い飲食物などでも、重度のやけどになることがあります。身の回りの暖房器具や、蒸気の出る機器(炊飯器やポットなど)の配置を変えたり、テーブルクロスやつまづきそうな敷物をなくすなどの工夫が必要です。
子どもの場合は1%(子どもの手のひら大)以上のやけどは早めに受診し、10%に及ぶ場合は直ちに冷やして病院に搬送しましょう。


やけどは素早い対応で重症化が防げます。また、家の中や生活を見直してみることで、残念な事故を未然に防ぐことも出来ます。暖房器具や調理器具の使い方や配置などを、この機会に再確認してみましょう。


一般社団法人 日本熱傷学会

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