健康かわら版 3月号 「過敏性腸症候群」について

 少しずつ春の気配を感じる季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
3月は季節の変わり目で気候が安定しない時期ですが、年度末・学年末の時期でもあり、お忙しく過ごされる方も多いと思います。なかには生活パターン環境の変化などによる緊張で、お腹の調子が悪くなる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今月は「過敏性腸症候群」についてお話します。「症候群」とはひとつの症状に限定されず、様々な症状が現れる疾患を指します。お腹の不快感や急な腹痛が少しでも軽減できると、安心して生活できるようになります。お腹に不安のある方は、生活を振り返ってみましょう。

過敏性腸症候群(IBS)とは

下痢や便秘を繰り返し、腹痛や腹部の不快感を伴う疾患。主に大腸の蠕動運動や分泌異常など、大腸の機能によって生じる機能性疾患と考えられています。検査では炎症や潰瘍などの特異的な(器質的)異常はありませんが、下痢や便秘などの便通異常や、ガスによる腹部膨満感などの症状があります。排便により症状が軽減しても、また同じような症状を繰り返すことが多くあります。また、夜間の睡眠中には症状が起こりにくいという傾向があります。原因としては、大腸を中心とした消化管運動の異常、消化管知覚閾値の低下、ストレスなどの心理的要因、ライフスタイルの歪みなど。単一要因であることは少なく、いくつかの要因が複合的に関与していることが多いと考えられます。

症状により、3つの型に分類されます
どの型も、排便によって腹痛や不快感、膨満感や吐き気などが軽減されます。
・便秘型
・・・コロコロとした硬便で、排便困難を伴い、排便後も残便がありすっきり出ないタイプ
・下痢型・・・軟便や水様便、粘液便が頻繁に出るタイプ
・交替型・・・便秘型と下痢型を交互に繰り返すタイプ
※めまい・頭痛・肩こり・イライラ感・不眠・不安感などが伴うことがあります。

便秘と下痢の定義
「便秘症」とは「排便が数日に1回程度に減少し、排便間隔が不規則で便の水分含有量が低下している状態(硬便)を指します。ただし排便習慣は個人差があり、毎日排便があっても硬便や排便困難があったり、排便は2〜3日に1回でも排便に苦痛がない場合もあります。問題となるのは苦痛(排便困難や腹部膨満感など)の症状を伴う場合です。
「下痢」とは医学的には「1日の糞便中の水分量が200ml以上」と定義されていますが、一般的には便の水分量が増して泥状〜水様になった状態をいいます。多くの場合排便回数も増えます。

気になる症状のある方はセルフチェックで生活を振り返ってみましょう

【日常生活での症状】
□ 通勤中や通学中にお腹が痛くなりトイレに駆け込む
□ テストやプレゼンなどの緊張する場面でお腹が痛くなり、トイレに駆け込みたくなる
□ 電車やバスの中で急におなかが痛くなり、トイレに駆け込みたくなる
□ 出張先や旅行先で急にお腹がいたくなり、必死でトイレを探す。
【お腹の症状】
□ 何週間も下痢や便秘が続いている
□ よく腹痛や腹部膨満感に悩まされている
□ 排便すると腹痛がやわらぐ
□ 下痢と便秘を交互にくりかえす。
□ 排便後、残便感がある
□ 突然トイレに行きたくなる
□ お腹がゴロゴロとなったり、ガスがでる
□ 眠っている間はお腹が痛くならない。
【お腹以外の症状】
□ 頭痛や頭が重いと感じることがある
□ めまいや肩こりがある
□ 眠れない
【生活習慣のチェック】
□ 朝食を食べない
□ 食事の時間や量が不規則である
□ タバコをよく吸う
□ お酒をよく飲む
□ 運動不足である
※ここでのチェックは診断ではなく、あくまでも傾向を把握するものです。日常生活での症状とお腹の症状に思い当たる方は、専門医の受診をお勧めします。
他の大腸の疾患や感染症などでも上記のような症状があるものもあります。きちんと検査を受け、その他の疾患の有無を確認することが必要です。



過敏性腸症候群の診断基準

(6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月以上は下記の基準を満たしていること)
過去3ヶ月の間に1ヶ月当たり3日以上にわたって腹痛や腹部不快感(※)が繰り返し起こり、下記の項目のうち2項目以上がある。
1.排便によって症状が軽減する
2.発症時に排便頻度に変化がある
3.発症時に便形状(概観)の変化がある
(※)腹部不快感とは痛みとは表現されない不快な感覚

医療機関での治療について
食事療法や運動療法などの生活習慣生活習慣の改善をしたり、ストレス緩和を行なっても十分効果がない場合は、薬物療法を行ないます。消化運動機能調整薬や便の状態に合わせた整腸剤、場合によっては自律神経を整える薬などをつかうこともあります。


日常生活での対策

○ 朝食をきちんと食べましょう。「朝食を食べ、トイレに行く」を朝の習慣にしましょう。
○ 食事内容を見直しましょう。
 ・ 控えるもの:お酒、カフェインを含む飲料、冷たい飲み物、炭酸飲料、人口香味料、香辛料などの刺激物
 ・ 増やすもの:食物繊維を多く含むもの(野菜など)。乳酸菌食品。
○ 食習慣を見直しましょう。夜食を控え、規則正しい食事を。ドカ食いを避け、毎食バランスよく、ゆっくりよく噛んで食べるようにしましょう。
○ 睡眠を十分とり、生活のリズムと自律神経の乱れを整えましょう。
○ 適度な運動をして血行を良くしましょう。運動は冷えやストレスの解消にもなります。
○ お腹を冷やさない工夫をしましょう

生活の乱れやストレスは、腸にも影響を与えます。症状を軽くすることで生活の質を向上させることが出来ます。新しい年度を「快腸」に始めましょう。



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